「・・・むう」


混乱しきっている、私。右ってどっちだったっけ?お箸を持つほうが・・・確かどっちかだったような。 ううん、じゃあきっとこっちだ。私は左利き。あれ?じゃあ左って右?わけが分からない。 いや、こんなことを考えたかったわけじゃなかったんだ。そんなことはどうだっていいんだ。 ただ自分のしたことの意味がよく分からずにいる。だからちょっとだけ、頭が混乱しているんだ。 手にはまだはっきりと感覚が残っていて、それが気持ちのいいことだったかと言われると――そうでもない。 酷く吐きそうになるような、でもなんだかスッキリしたような。最後にちょっぴり罪悪感みたいなものがチクチクと心を刺したけれど。


(ん?・・・、・・・・・・。・・・・・・、あ)


頭の中でカシャンと何かが噛み合う音がした。 そうだ、この感覚はあの時ととても似ている。似ているというより同じと言ってもいいかもしれない。 確かあれは1年前の春だった。春。春。春といえば始まりの季節だ。 こういうのって大概人の頭の中も春みたいにぽっかぽかになるものだからほんの少しだけ理性っていうリミッターが外れ易くなる。 その時こそ正に売り時だ!ってな感じでお店には一気に新商品が増えて、理性のリミッターが外れたお客さんはその新商品を欲しくなる。 私も春に理性というリミッターを外されて、新しい携帯が欲しくなった。 でも親が「まだ変えるのには早い」って言って許してくれなくて、何度交渉しても許可を貰えずにいて、そして私は考えた。 考えたら結果が出た。それを実行したら新しい携帯を買ってくれた。


「そっか!私、・・・そうだ!」


にへ、と笑う。さっきまで自分を悩ませていたものが解かれたということと、これから自分に起こることを考えたら笑わずにいられなかった。 あの日新しい携帯が欲しかった私は学校の屋上から携帯を投げ捨てたのだ。 グラウンドに無様に叩きつけられた携帯はあっけなく壊れた。そして新しい携帯を買ってもらったのだ。 勿論投げ捨てた、なんて言わなかったけれど。


「新しい人、どんなのかな」


スキップしながら家に帰ろうと思った。新しい人。新しい人を求めていたんだ、私。 だから古い人を私は壊しちゃったんだ。うん、それなら仕方が無い。 彼は野球部だ。いつも楽しそうにバッドを持って素振りをしながら野球の話をしてくれた、彼。 彼のバッドには名前が書いてある。曲面に書かれている為に歪だ。 そんな歪な字で名前の書かれているバッドを投げ捨てる。べしゃり。真っ赤な水溜りにダイブした。


「・・・!そういえば」


思い出したことがある。


「私、左利きだからお箸を持たないほうが右なんだ!」






ポジティブベイビィ!



(笑って笑ってあなたに苦悩は似合わない)

2008.01.22