何かに誘われるようにして見上げた空は酷く青かった。


空が青い理由を幼い頃母に聞くと、「海と仲がいいからよ」なんて言われたけれど、 今ではきちんと青などの短波長の光が水蒸気や塵に反射するからだと言い切れる。 幼い頃から僕はこの空の青さが大嫌いでしかたがなかった。 青さ、というより青空が嫌いだったのだ。雲ひとつない青空がとにかく嫌だった。 その空の青さはいつだって僕に付き纏う。鬱陶しいこと極まりない。 何より一番嫌だったのは、その色がとても―苛立つほどに―綺麗だったからだと思う。 「私は汚れを知らない」とでも主張するかのような青さ。 その主張はまるで「お前は汚い」のだという罵りの言葉のようにも思えた。 また、それが事実だと知っていたから余計に腹が立ったのだ。


(嗚呼そんなに僕を責めないでくれ)


お前が綺麗で美しいことは、よく分かる。 だからわざわざ空を見上げに外へと赴く人もいるのだ。 空を見て心を安らがせる人だっているのだ。


(……見せびらかせなくてもいいじゃないか)


その代わり夜はとても好きだ。 街の明かりに照らされてはいるものの、真っ暗で果てがない。 まるで自分のようだと例えられるからなのだろう。 夜空の暗さから見れば、光り輝く星こそが異端者と云える。 暗闇こそが夜空の中での一般人であり常識であり、基準なのだ。 だから夜が好きだ。唯一空が弱さを主張している気がする。


雲ひとつないこの大空から見る僕はどれだけちっぽけなのだろう。 青青と広がるこの大空から見る僕はどれだけ色褪せて見えるのだろう。 どれほど惨めに生きているのだろう。


(世界がモノクロームに覆われていても、きっと)


(この空だけはきっと青い)


不意に現れた飛行機雲が青空を二分割した。 少し気分が晴れたような気がした。
Blue Blue Sky!


(うらやましいんだよお前が)


2007.05.13